戦国時代の領国経営と現代の企業経営
戦国大名家を現代の経営分析フレームワークに当てはめてみたいと、歴史好き、特に信長の野望世代なら、ついつい思ってしまうのではないでしょうか。
私も、中学生のころに、MSXのセール品を和光電気で購入して、光栄(現コーエーテクモ)の信長の野望と三国志に夢中になった一人です。
振り返れば、ゲームの中とは言え、戦国時代の大名として、領国の経営をしつつ、版図の拡大も行い、部下の管理する必要があった事を考えると、現代の企業の活動を単純化させて遊んでいた気がします。
そして、戦国時代でも、現代と同様に、自家が生き残るためには、機会を捉えて強みを活かし、脅威に備えて弱みを克服していく必要があったと思います。
現代のSWOT分析のようなフレームワークに当てはめてみると、そこに現代の企業経営に活かせるヒントが見つかるかもしれないとチャレンジしてみたくなりました。
ということで、死ぬ直前の上杉謙信時代の上杉家をSWOT分析に当て込んでみると下記のような感じになりました。
上杉謙信が後継者を指名していないという弱み
越後の虎、軍神とも呼ばれる上杉謙信は、現在の新潟県である越後の春日山城を根拠地として、無類の強さを誇りました。
強みと言えば、武田信玄も認めると言われるほどの戦の強さです。
ライバルである武田信玄の死亡という機会と、その強みでもある戦の強さにより、最盛期には、越後、能登、越中等を領するまでに版図は拡大します。
しかし、実子のいなかった謙信は、後継者を明言していなかった事で、自分の死後に、上杉家を二分する大混乱(御館の乱)を呼びます。
その混乱に、乗ずる形で他国から侵略されて版図は大きく縮小していき、上杉景勝が内乱を収めた時には、越後一国の支配もままならない状態にまでなりました。
この辺りは、現代の事業承継で起こりうる問題点と似ている気がします。
承継を終えていない状態で、代表が倒れてしまった場合に、会社がお家騒動によって大混乱を起こし、ブランドイメージが悪化し、業績を悪化させてしまうパターンですね。
現代にも通じる事業承継のトラブル
上杉家の承継問題は、現代の例でいうと「一澤帆布工業」の兄弟間のお家騒動が、少し近いパターンかもしれません。
先代が亡くなる18年前から会社の代表取締役は三男の信三郎氏が引き継いでいたものの株式は先代が保有したままでした。
先代の死後に、三男と長男が自身の持つ遺言書に書かれた株式の相続について激しい訴訟合戦を招いてしまいました。
株式を生前に信三郎氏に相続させておければ、他者からつけ入る隙を与えずに済んでいたと思います。
そうすれば、一澤帆布工業のブランドイメージを悪化させるようなお家騒動にはならなかったのではないかと思います。
上杉家であれば、上杉景勝を高い地位において後継者候補である事を示すだけでなく、争いの火種となる存在の上杉景虎は、分家などに養子にだしてしまって、跡目ではない事を明白にさせておくと良かったと思います。
もし、誰かを後継者と考えているのであれば、事前に踏める手続きは踏んでおくのが事業承継の要のようです。
まとめ
今回は、戦国時代の上杉家を少し無理やりにSWOTのフレームワークに当てはめてみました。
「後継者を指名していない」「家臣の離反が多い」という点をみると、上杉家には組織・人事面での問題が多かったようです。
離反者を許す土量のデカさも謙信の魅力ですが、人事について果断な処置ができていれば「家臣の離反が多い」を防ぐことができて、京への上洛も出来ていたかもしれません。
後継者を明言して処置をしておけば、「後継者を指名していない」事による混乱を招かず上杉家の弱体化を招かなかったかもしれません。
そして、これは現代の企業でも起こりうる問題だと思います。
こんな感じで戦国時代をモチーフにして、経営フレームワークを試してみるのも楽しいものです。
モリアド代表 中小企業診断士
前職にて企業の海外WEBマーケティングの支援に従事。独立後に中小企業診断士の資格を取得し、主に企業の経営サポートやWEBマーケティングの支援等を行っている。
2019年から、現代のビジネスフレームワークを使って戦国武将を分析する『戦国SWOT®』をスタート。
2022年より、歴史人WEBにて『武将に学ぶ「しくじり」と「教訓」』を連載。
2024年より、マーケトランクにて『歴史の偉人に学ぶマーケティング』を連載。
著書に『SWOT分析による戦国武将の成功と失敗』(ビジネス教育出版社)。